約束手形の廃止について注意点と今後の方向性を考えた
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約束手形の廃止について注意点と今後の方向性を考えた

札束 未分類

ニュースサイトで2月17日・18日に報道された『約束手形廃止』の記事ですが、

発端は首相官邸の政策会議の議事です

第1回 中小企業等の活力向上に関するワーキンググループ 議事次第 (kantei.go.jp)

これについての“判明している内容”・“今後起こりうる障害”・“メリットデメリット“について、現状での予測について考えてみました。

約束手形廃止の名目は『中小企業・下請け企業の資金繰り改善』

政府の方針では資金回収までの期間が長い“約束手形”廃止し中小・下請け企業の資金繰りを改善させたいとのこと

ニュースサイトで2月17日・18日にこぞって更新された記事によると、以下の通りです。

 約束手形の支払期日は現行、最長120日となっている。経産省が実施したアンケート調査によると、支払いにかかる期間は現金振り込みが平均約50日だったのに対し、約束手形を利用した場合は約100日もかかっていた。

 このため、約束手形は支払い側の企業にとって資金繰りに余裕が生まれるメリットがあるが、受注した側の企業の資金繰りは厳しくなる。さらに、紙でのやりとりは受け渡しや保管の手間がかかる上、新型コロナウイルス感染拡大で求められるテレワークなどの妨げにもなる。

約束手形、26年めどに廃止 産業界に要請へ―政府方針:時事ドットコム (jiji.com)

確かに、手元に資金として入るタイミングが約2か月も早くなることはメリットです。

約束手形で代金を受取ると基本的に期日まで待ちます。

しかし、近々まとまった資金が必要な場合、約束手形だと銀行からの借入 or “割引”で目減りした金額の即時受取りになります。

どちらを選択しても、手数料が掛り本来受け取れる金額より目減りします。

これが、振込で支払われると、目減り無く満額受け取れることになります。

“政府”より“現場”に近い とりたぬ がこの政策について考えてみたら、目的に疑問が出てきた

この政策が実行された時に、大企業と零細企業の支払方法について考えたら、違和感ばかりで本当に上手くいくか疑問になった

この政策について実際に銀行員に聞いてみたら、以下の話が出てきました。

先ほど上で紹介した引用したサイトにも記載がありましたが、

政府は約束手形の代わりに、現金振り込みやインターネットバンキング、電子手形などの利用を促す。

約束手形、26年めどに廃止 産業界に要請へ―政府方針:時事ドットコム (jiji.com)

とのこと。

零細企業の経営者や中小企業の経理担当者ならピンとくると思いますが、“電子手形(=でんさい)”は廃止どころか促進の方向だそうです。

約束手形とでんさいの差は、紙媒体か電子データか、印紙や送料がいるかいらないかの細かい違いはありますが、

基本的には、振出(発生記録)から支払サイト(最長120日)を経過したのちに資金化されるという部分は同じです。

つまり、同じ政策の中で

・約束手形を廃止して資金化を短期間にしましょう

・でんさいはどんどん利用して、支払サイトの長い払い方をしましょう

と、矛盾した発信をしてるのです。

零細企業にとっては“でんさい”はハードルがあるため“振込”が増える

約束手形廃止後は、中小零細企業も“でんさい”に変えればいいという単純なものではない

でんさいはインターネット上で約束手形の様な帳票を授受しますが、

個人経営、数名で経営している企業、年配の経営者・経理担当者がいる中小零細企業はどうでしょうか。

インターネットがあっても、

・年配の方ででんさいの仕組みが理解できない

・大切な売上を電子データでやり取りするのに抵抗が有る

・理解は出来てもパソコンでカタカタ事務作業をする余裕がない

という企業も少なくはないと思います。

このような企業は、振込やインターネットバンキングを選択するしかないのではないでしょうか?

『仕入=でんさい、支払=振込』となるリスクあり

規模が大きく体力がある企業がでんさいで支払、零細企業が振込で支払をするという本末転倒な構図もあり得る

大企業や中小企業でも規模の大きい会社は既に“でんさい”での決済を採用しているでしょう。

そこで、考えらえる本末転倒な構図は

【現状取引条件】

手形から手形

受取:約束手形 (120日サイト)

支払:約束手形 (120日サイト)

で、それぞれが同程度の支払サイトであった商売が

【変更後取引条件】

でんさいから振込

受取:でんさい (120日サイト)

支払:振込 (50日後の支払)

という状態です。

今まで、収支のタイミングが同程度であったのに対し、変更後のタイミングは受取が遅く・支払いが早くなるという状況になります。

『資金繰りの改善』という名目の政策が、目論見と正反対の“資金繰りを悪化させる”可能性が多分にあるというリスクを想定されているか疑問です?

約束手形とでんさいの普及割合は半々程度

銀行曰く現状の普及割合はざっくり半々とのこと

5年後に廃止すると宣言している約束手形の普及率は50%程度あるという驚きの事実です。

既に普及率がほぼほぼ無くなってしまい、事実上廃止されている決済方法ではなく、現状まだまだ現役バリバリの決済方法です。

振込のみやファクタリングなどで、そもそも約束手形を使用していない企業があるにしても、約束手形を利用している企業数はかなりの数にのぼると思います

経営者目線で考えるとデメリットだけでなくメリットもある

実務面で考えるとこの政策は実はメリットも少なくはないように思います

ここまで、ネガティブな意見を書いてきましたが、実務ではメリットもある程度ありました。

メリット:事務・管理の削減、貸倒リスクの減少

約束手形で手間だったのが、

・支払日の管理

・金額の管理

・約束手形の保管

・銀行への手続き

など、事務の手間が多々かかっていました。

この手間から解放されるのは助かります。

また、既にでんさいを採用している企業がからすれば、

約束手形+でんさい

の2パターンを管理する手間がありました。

それが、約束手形が廃止となれば、でんさいのみの管理で良くなるわけです。

また、倒産による貸倒リスクの面で言うと、資金化までの期間が

・約束手形:100日程度

・振込:50日程度

と、半分程度になるのと同様に、『倒産し回収できない』というリスクも半減するように思います。

印紙代・郵送料も個々では少額(100万未満・簡易書留で604円)ですが、チリも積もれば、年間で結構な金額になってしまいますので、メリットではあります。

デメリット:資金繰りの見通しが立てづらい

約束手形で支払場合は100日程度後の資金を計画して手配すればよかったのが、50日程度後の資金を計画することとなり、資金の入りも出も期間が半減します。

資金不足になると判断してから、社内で決済を取り、銀行内の決済を得て、借入をする。

銀行にすんなり決済されればいいですが、借入を断られた場合、次の銀行にあたるには期間がギリギリになりそうです。

この点も、大規模の企業なら経理担当が計画的に動くでしょうが、零細企業や個人経営の場合は判断が遅くなるリスクがあるということで、政策の名目からすると本末転倒な気がします。

約束手形廃止だが、為替手形についての記載はない

ここまでの話は“約束手形”についてで、“為替手形”は対象外となるのか!?

政府の議事にも、各メディアの報道でも確認した限り“約束手形”と記載されており、“為替手形”については記載がありません。(記事記載時点では)

“約束手形・為替手形”や“手形決済”などの記載ではなく、あえて“約束手形”としか記載しないのは何か理由があるのではないか?

もしくは、為替手形については現行通り継続されるのか?ということになります。

“約束手形”・“為替手形”の本質は別物であるにしても、実務の中ではほぼ同様に扱われています。

“約束手形”が廃止されたとしても“為替手形”が現状通りだとなると、それこそ何も変わらないことになります。

まとめ

現状では、情報が少なく、政府がどの方向に持って行きたいかがイマイチわかりませんが、名目の『中小企業・下請け企業の資金繰り改善』が狙いというのは疑問が残ります。

今後の追加発表で納得するような理由が出てくるのか、もしくは、何もないまま単に紙媒体の決済方法を衰退させたいのかは不明です。

勝手な予測ですが、『中小企業・下請け企業の資金繰り改善』は名目だけであり実際の狙いは

・現行の手形(紙媒体)での取引=お金の流れがつかみにくい

→ でんさい(電子データ)の促進

→ 大きな金額(10万円以上)の流れを支払元・支払先ともに把握しやすくする

→ 税金報告の不正を見つけやすくする

なんかあるのかなぁ・・・・・

って、勝手な妄想をしています。

今後もこの情報に注視し、追加情報があれば更新していきたいと思います。

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